A線上の二人

「そういう時はねぇ、たっちゃん」

「うん?」

「家に来るのよ!」

 ビシッと指を突き付けると、何故かのけ反る仕草を見せたけれど、構わずに言いたい事を言わせてもらおう。

「だいたい、たっちゃんって無口過ぎるのよね」

「そうか?」

「だいたい──……」

 新年会をやったのは……

「いつだったか忘れたけれど、その時だって、うちの親父に絡まれていただけじゃない」

「…………」

 何か言いたそうな達哉くんに、

「……私も人の事は言えないけれど」

 ちょっとだけ言い添えてみる。

 すると達哉くんは何かを考えながら、私の隣りに座ってブランデーを継ぎ足した。

「あ。手酌でごめん」

「いや、いいよ。いつもの事だから」

 ……いつも手酌なの?

 どんな風にいつも飲んでいるのか気になる所だけれど、

「酔った千夜は楽しくていいね」

 そんな事を言われて瞬きを返した。


 正直、今のやりとりのどこが楽しかったのか謎すぎるけれど。

「そう?」

「うん」

 と言うか、どこがどう楽しかったのか、とても聞いてみたいけれど。

 ボトルをテーブルに置いた達哉くんが、本当に寛いだ様子だったから、不粋な事はよそうと思った。

「ねぇ」

「うん?」

「ブランデーって美味しい?」

「まぁ、高いだけあるかな……」

 ふっと視線が合って、

「千夜はダメ」

「えー……」

「君、結構弱い」

「弱くないっ!」

「弱いよ。顔赤い」

「え。パンダになってたりする?」

 ピタピタ顔を叩くと、何だか微笑まれた気がする。

「…………」

 相手は達哉くんのくせに、とても恥ずかしい。

 だけれど、

「……飲ませてよ」

 ボソリと呟いたら、溜め息一つでグラスを差し出された。

「いいの?」

「いいよ。ただ、僕は知らないからね」

「大丈夫よぉ。吐いた事なんてないから」

 なんて、言っておきながら……



 しっかり酔っ払った。





 ……それが、思い出せる限りの記憶。


 翌朝、私は冷たい床の上でシーツ一枚を纏って目を覚ました。












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