A線上の二人
それって……。
「私が……?」
「君以外に言われたら大変だろう」
もっともだ。
間違いなければ、私達は自他共に認める夫婦。
役所に出した書類にもそう記されているし、公的にも〝夫婦〟として扱われる事になるだろう。
夫である達哉くんが、妻である私以外に〝そんな言葉〟を言われたら、確かに大変な……。
いや……
なんて言うか……
「私が言うはずないでしょう」
「うん。そう言うと思っていたよ」
あっさり肯定してくるのが悔しい。
「……千夜は嫌な事はしないから。その点では安心できる」
そう言いながら、オーディオをセットする彼。
「…………」
何だか見透かされてる……。
「……私達って、何か変な夫婦ね」
「そうだね。でも、夫婦は夫婦だろう?」
「つまり、それが答えでいいわけ?」
「それはね」
どれはいけないのだろうか。
考えていたら、いつの間にか近づいて来ていた彼に、ポンっと肩を押された。
「………?」
「実感ない?」
「…………」
ないと言えば、無いんだけれど。
それを言うのも憚られて、無言でいたら……
「じゃ、夫婦らしいコトをしよう」
そう言いながら、ソファーに押し付けられる。
「え……あ、あの」
ちょっと……
展開早過ぎない?
いや、まぁ、もう夜でもあるし、夕飯も終わってお風呂も入ったけれども……。
いやいやいや、まともならベットでしょう。
「達哉くん」
「ん……?」
首筋に顔を埋めていた達哉くんが、ふっと動きを止める。
「床に押し倒すのがブームなの?」
「僕が、いつでもどこでもの変態みたいに言わないでくれないか?」
「違うの?」
一瞬だけ視線が合わさって……。
「一度抱くと、際限なくなるものなんだ」
それは……変態だと言っている様なものなのだけれど。
感心している場合でもない。