A線上の二人



「だからね、たっちゃんは男性としてどう思う?」

 食卓の目玉焼きを食べながら、フォーク片手に眉を吊り上げる私を、達哉くんは黙って見てい……いや、眺めていた。

「ちょっと聞いてる?」

「一応」

 そう言ってコーヒーを飲む。

「だから……」

「話は解った」

「本当にぃ?」

 疑うのは悪いけど、無表情の達哉くんだから、どうもイマイチ考えている事が解らない。

「……30分も身振り手振りで力説されたら、解りたくなくても理解はする」

「…………」

 ……達哉くんて、皮肉が上手になったよね。

 なんて、考えていたら。

「それはともかく」

 と言う前置きで、達哉くんはコーヒーのカップを置いた。

「真夜中に、一人暮らしの男の家に突撃してくる女子高生は、男性としてどうかと思う」

 真夜中に起こしたのは悪かったかも知れない。

「夏休みだから……」

「夜遊びのし過ぎだ。次は庇わないよ」

「電話来た?」

「きた」

 短い返事に両手で顔を隠す。

 昨日は友達のライヴで、その後の打ち上げに参加した。

 参加したはいいけれど、真夜中になってしまうのは目に見えていたから……

「遊んで夜中に帰ります……より、たっちゃんの家に泊まります……の方が怒られないんだもん」

「人を引き合いに出さないでもらいたい」

「えぇ〜。だって、私とたっちゃんじゃ、信用度が違うんだもん〜」

 当時、18歳の私。

 当時、23歳の彼。

 そこまで考え、ふっと、就職活動の真っ最中だと気付いて口元を押さえる。

「ごめん。忙しかったよね」

 そう言ったら、不思議そうな顔をされた。

「何が」

「だって、ホラ。世の中不景気じゃん? 就職活動とか忙しいんでしょ?」

 ますます不思議そうな視線に、逆に首を傾げる。

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