A線上の二人

「休学して、留学したのは覚えていないのか?」

 休学?

 留学?

 留学って……

「あ゙………」

 呟くと溜め息が返ってきた。

「後1年は大学にいる。とは言え、就職活動はしているが」

 淡々と言いながら、トーストを口に運ぶ達哉くん。

 確か、2年くらいは海外に行っているんだよね。

 長い休みにはいつもいるし、私もたまにしか来ないから忘れてたけど……。

「昔から、都合のいい時にしか来ないから」


 はい。

 その通りでございます。


 もそもそと残りのおかずを食べていたら、じっと見てくる達哉くんに気がついた。


「なに……?」

「いや」

 視線を落とし、軽く首を振る達哉くん。

 なんだこの野郎。

「何よ〜」

「いや。ちーちゃんは〝ちーちゃん〟のままなんだな……と」

「…………?」

 ちーちゃんは私だけど……。

 何? どういう意味?

「18歳て事は高校卒業でしょう?」

「うん?」

「友達の恋愛話ばかりで、自分の話はないのかな」

「………っ!?」


 な……っ!

 何て失礼な事をっ!

 それって〝言っていい〟事か〝悪い〟事かって言ったら、絶対に悪い事だからっ!

 思っていても、思った事をそのまま口に出さないのが大人ってもんでしょう!?

「いるわよっ!?」

 言った瞬間、後悔した。

 いつも無表情の達哉くんだけど、どこまでも無表情……と言うか、人間に見えないまでの無表情で顔を上げ、


「……いるの?」


 超低音に、



「正確にはいた……」

 何故か訂正した。

< 5 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop