A線上の二人

 生まれて18年間、彼氏のカの字もなければ寂しいだろう。

 そういう訳で、友達の友達、と言う、結構微妙なオプションつきの紹介を受けた事がある。

 相手は大学生一年生で、二つ年上。

 最初はテニスに熱を上げる爽やか男子だと思っていたけど、実はエセスポーツマンだった。

 ……よく考えてみたらそうなのよね。

 テニスのサークルが忙しいとか言って、デート回数も少なかったのに、その割にはやたら色白なお肌で。

 ……考えてみたら、達哉くんて健康的な肌色だよね。

 家でも音大でも、どちらにせよ野外に出なさそうなのに。

「たっちゃんて、いい色してるよね」

「何が」

「お肌が」

 言った瞬間、達哉くんはコーヒーを吹いた。

「ぎゃぁぁあっ! きたなっ!」

 達哉くんは無表情で立ち上がり、フキンを持って来ると、無言で食卓を拭いた。

「…………」

 やたら冷静だな、オイ。

 なんて、思っていたら、

「……ったのか?」

 へっ?

 なになに? 聞こえない。

「やったのか?」

「…………」


 えーと。


「どんな連想してるわけっ!?」

 叫んで立ち上がると、達哉くんは溜め息をついた。

「最近の高校生はそうなんだろう?」

「最近のって、たっちゃんだってまだ若造の部類でしょうが! だいたい人に聞く前に、自分はどうなのよっ!」

「それは女子が聞く事じゃないだろう」

「同じ言葉を返します!」

「僕は女子じゃない」

 そうじゃな〜いっ!!

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