A線上の二人

 ああ……なんだかもう、調子が狂う。

 昔からそうだったけど、達哉くんってどことな〜く、ズレてるんだよね。

 マイペースって言うか、マイウェイって言うか。


 ……何だか疲れた。


「しばらく彼氏はいいや」

 ポツリと呟いたら、ふっと困惑する視線。

「何かあったのかい?」

「うん。まぁ……」

 テニスのサークルが忙しいから……と、付き合っていた半年間のデートは数える程度。

 それもそのはずで、彼はその半年間、私とは別の人とデートしてた。



 ……男の先輩と。



 いやぁ、さすがに私も自分の〝彼氏〟が、男の人とキスしてホテルから出て来るとは、夢にも思わなかった……。


 ……まぁ、何て言うか。


 頭では理解していた。

 世の中には色んな人がいて、好きになってしまったものはしょうがないって言うか、どうしようもないって言うか。

 ただ彼は異性より、同性を好きになるってだけで、理解はできたのよ。

 ただ、感情では理解出来なくて……。

 紹介されて、そんなに会いもしなかった彼氏の存在が〝好きだった〟か、と聞かれれば、それはNOだけど、やっぱり腹がたった。

 何に腹がたったかと言えば、ソレのカモフラージュに〝私〟を利用したことよ。

 何だかもう……

「恋愛に夢は持たないでおきたいと思います」

 呟くと、

「………それは大変だな」

 何だか奇妙な返答に、今度は私が困惑した。


 近いようで近くない。

 遠いようで遠くない。

 ……幼なじみと呼ぶほど親しくはなくて、知り合いと呼ぶほどよそよそしくもない。

 たまには連絡を取り合う仲。

 なんとも簡単でややこしい関係。





 それが私達だった。










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