Santa_Claus
「ただいま、お婆さん」


 玄関に入った途端、ジャックはふぅ……と吐息をもらし、寒さで凍り付いた心がゆっくりと融けていくのを感じた。


「ジャックや、おかえり。外は寒かっただろう?早う中に入って、暖炉にあたたまり」


 中からお婆さんの声が聞こえたので、ジャックは靴を揃え、暖炉のある部屋へと向かうべく、廊下を突き当たりまで速歩きで向かった。

 廊下の突き当たりにある扉を開けると、ほんわかとしたあたたかさが自分の身体を包んでいくのが分かる。

 ジャックは身に着けていたものや荷物をダイニングテーブルの上に置くと、部屋の隅にある中心の赤々と燃える暖炉にすっ……と手のひらを向けた。

 手編みの手袋をしていたおかげかそんなに指先は冷えてはいないが、多少冷えていた指先はジンジンとあたたまっていく。


「悪いねぇジャック。寒い中を買い物に行かせてしまって……。料理は私が作るから、ジャックはゆっくりあたたまっておゆき」


 車椅子に座るお婆さんが、ダイニングテーブルの上の荷物に手を伸ばそうとするので、ジャックは慌てて止めにかかった。


「僕がやるからっ!僕がやるから、お婆さんはゆっくりとしててよ。ね?」

「いんや、今日は私がやるよ。毎日毎日、ジャックに家事を任せて悪いしねぇ。今日はイヴなんだから、ジャックがゆっくりする番だよ」


 そう言われてしまい、ジャックは渋々承知した。
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