God of Death



 ーーさようなら、さようなら、またね、さようなら。


 幼い子供の声が聞こえる。小さくて聞き取りにくい声だった。

 ーーええ、またね。

 今度は、老婆の声。こちらはハッキリとしていて、聞き取りやすい。どうやら、この世に未練はない様だ。



「やっと、終わった……」
 彼は、深いため息を吐いた。そして、高層ビルの屋上にある給水タンクに腰を下ろす。辺りは暗い闇に包まれていて、空を見上げると真っ黒な空に真っ白な満月がぽっかりと浮いている。星は見えない。
 夜中の三時だというのに、街は明るい。道路を走る車の数は少ないが、怪しい店の放つネオンの光が溢れている。

 仕事を終えた後で、テンションが下がりきっている彼には、それら全てが鬱陶しくてならなかった。
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