閃きの神様
「ベリー&ベリーと宇治抹茶!」
神坂がニコニコと注文を言う。
あたしの右手は未だ解放されていない。
そして今あたし達が並んでいるのは…
「なんでクレープ?」
そう、移動販売のクレープ屋さんなのだ。
「バッカヤロー。ただのクレープ屋と一緒にしてんなよ?」
「どこが違うの?」
「ふっ。よくぞ訊いてくれた!」
その時あたしは、やってしまった、と後悔した。
神坂の甘味好きっぷりを普段からあんなに目にしていたというのに。
「このクレープ屋は、知る人ぞ知る名クレープ屋で、神出鬼没!しかし味は絶品!今朝、西区に来るって噂を耳にしたからには、これは行っておかなきゃだろ、神様として!」
ちょう熱く語られた。
「いや、神様としてってのはオカシイでしょ!」
「いんだよ、別に。甘いもんが食えりゃ~♪」
かなりご機嫌だ。
でも、甘い物が関わってる時の神坂は、やっぱりピュアな笑顔で、あたしはちょっと動揺してしまう。