最果てのエデン

入ったホテルが綺麗であたしは少し自尊心を満たされたような心持になる。

考え事をするときはどこまでも堕ちていくのは自分の常だけれど、なにか即物的な欲を与えられると、たちまち目の前のことでそれを忘れてしまえるのだ。


そんな自分をどうしようもない女だとあたしは思う。
だから、言い聞かせるようにしないと万葉のことさえも忘れてしまう、きっと。

きっと。




「美月ちゃん」


快楽の狭間で歌うように芹沢が名を呼ぶ。
ねぇ、美月ちゃん。楽園に連れて行ってあげようか。

< 115 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop