最果てのエデン




いつも通り乾いた布で拭いていただけだったはずなのに、変な力が加わってしまったのか、ぱりんっと軽い音を立てて華奢なグラスが割れた。


軽く眉をひそめて、グラスの破片を片付ける。
音でカウンター越しに視線を飛ばしてきた女性客に失礼しましたと小さく頭を下げて、いやな感じだなと思う。


――何がどうってわけでもないけど、気持ち悪ぃ感じ。


まぁでも。どうせ思い過ごしだろうと思い込むことにして、俺は新しい注文を受けて、シェーカーを振ることに集中することにする。

ささやかな会話を交わしながらの接客は、結構気に入っている。
夜だけ、この場所だけでまた日頃と異なる艶な姿を見せる静かなクラブ


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