最果てのエデン
焦点の合いきっていなかった美月の瞳が見開かれ、見下ろしていた俺の視線とかち合った。
戦慄くように唇が震えて、次に響いたのは高い馬鹿みたいな笑い声だった。
こんなに身体は密着しているのに、抱きしめてやる気はなくて。そこには優しさなんてきっとなくて。
あるとしたら、何かを残してやりたいというひどく勝手な衝動だけだった。
「何年前の話だよ、もう、万葉いないだろ?」
壊れたみたいに美月は笑う。その激しさに生理的な涙が浮かび始めた頃、彼女は喋るために口を開いた。
「やだなぁ、そんな冗談つまんないよ」
「――――――美月」
「死ぬわけないじゃん万葉が、だっているよ、万葉。万葉が死ぬわけないじゃない、万葉が」
「美月!」