最果てのエデン

昨日? 短く問われてあたしはぼんやりしたがる思考を働かせる。

――昨日。

すっと顔色が青ざめていくのが自分でも分かった。

芹沢と寝て、その後イチくんの店に行ったこと。どこかぼんやりした思考のまま『万葉』と泣き叫んだ記憶の断片だ。


「その顔色ってことは、覚えてんだ」

「―――イチくん、」


呟くように言ったイチくんの声には自嘲染みたものが混じっているように思えて、あたしは謝ろうとしていた言葉を思わず呑み込んだ。

「別にいいけどな」温度のない声で告げて、イチくんはベットから立ち上がった。
その姿を眼で追うことが出来なくて、あたしは布団に視線を落とす。


「――美月」

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