最果てのエデン
その男が、今どこかで平和に過ごしているんじゃないかと思うと、やりきれない気持ちになることもある。
けれど、その気持ちばずっとあるのかと言われれば、それは違う。
そうやって徐々に記憶は優しく薄れていっていた。はずだ。
少なくとも、美月と再会するまでの、俺は。
「――――なんでだろう、思ったこともなかったな」
美月は髪の毛を触りながら言う。
その彷徨う視線は何故か泣きそうに見えて。直視していられなくなって、俺も視線を伏せた。
その間に街へと戻りつつある車内は人の密度が増え、俺たちの間の会話は自然と消えていく。