最果てのエデン
――逃げるな、美月。
その言葉は、お前を縛りすぎたのか。
お前には厳しすぎたのか。
分からなかった。
車窓に目をやると、もう空は夕色に染まりつつあった。
早い、冬の日暮れ。
あの日、もう少し早く美月と万葉があの通学路を歩いていたら。
あるいは、遅く通過していたら。雨が降っていなかったら。
あの運転手がもう少し速度を落としていれば。
美月と万葉の立ち居地が逆だったら。
そんな『たられば』は、星の数ほど合って、きっと、誰の元にでも。
あの日、俺が美月を見つけなければ。あのとき、美月に声をかけていなければ。
俺はきっと美月を忘れていられたのに。
*