最果てのエデン


――万葉。


素直で優しくて、甘ったれで泣き虫で。美月が大好きだった。
でも、成長していたら「男」になってたんだろうな。
美月以外にも好きな女の子が出来ていただろうか。


――いや、あいつは頑固だったからずっと美月が好きだったかもな。



今の俺をあいつが見たら、怒るだろうか。


『美月ちゃんを泣かさないで』


最後まで、美月を守ったあの弟は。本当はあの瞬間、何を考えていたんだろう。

そこまで考える暇もなく、とっさに身体が動いたんだろうな。
けれど、そうあるための想いをずっと万葉はあの小さな身体にもっていて。

それで、だから。



でも、あいつは。

あいつが、自分のその行動の所為で美月を不幸にしたいはずがないんだ。それを美月は理解しない。


それがひどく、もどかしい。


< 182 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop