最果てのエデン

居間に繋がる敷居に立ってガラス戸に手をかけたまま、胸に沸き起こってくる重い感覚ごと吐き出すように言い捨てた。
そうすれば、気だるそうに食卓に上体を預けていた母は、口元に笑みを浮かべてあたしを見た。


(――いやだ、いやな、笑い方)



人の心を試すような、傷つける言葉を好む母が嫌いで、小さい頃は怖くてしょうがなかった。
その整った顔で口元をゆがめた笑みをかたどって彼女はいつだって、棘を吐き出した。


「――そんなことないわよぉ、あたしあんたが死にかけた時だって心配したのよぉ?」

「――――嘘ばっかり。駆けつけもしないで遊んでたじゃない」

「あたしはね、オトコ大好きなの、せっかく女に生まれたんだから愛されたいじゃない。でも、我が娘ながらあんたには負けちゃうわ」

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