最果てのエデン

『美月の馬鹿ッ』


そうだね、馬鹿だと思うよ。

里穂の泣きそうな顔が浮かんで消える。

でもね、しょうがないじゃない。
あたしはもう昔みたいに純粋に笑えないし、きっと泣くこともできないし。

悲劇の女を気取ってると思われたって、それがあたしにとっての現実なんだからしょうがないじゃない。


あたしは、みんなみたいになんて、なれない。


イチくんのあたしをさげずんだように笑った顔と、諦めたような微笑が浮かんでまた消えていく。
イチくん。

イチくん。


もう、その名をおまじないのように唱えていい時間は終ってしまったんだって分かってたはずなのに。




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