最果てのエデン

本当はね、ずっと誰にもいえなかったことがあるの。

あたしだって怖かったんだよ。苦しかったんだよ。
もう、右眼見えないんだよ。

でももう万葉は居ない。あたしが殺した。あたしが奪った。
なのにあたしが弱音なんて言えるわけないじゃない。
奪った事実を謝罪して、許してもらえるわけなんて、ないじゃない。


どうして、あのときあたしは万葉を庇ってあげられなかったんだろう?

そうでさえあれば。
そうできてさえいれば。


今もきっと万葉は生きていて、笑っていて。
イチくんもきっともっともっと幸せで。
イチくんと万葉のお母さんも生きていて。
幸せな家族がそこにあって。

あたしなんて、あたしなんか。


あたしは――。

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