最果てのエデン

「ねぇ、何であたしのこと知ってたの?」

「………しつこいね、お前」


明るい部屋の中で小さく笑った男は、外で見たときよりも少しだけ優しい気がした。


「……『La lune de l'hiver』で芹沢があたしの名前呼んだの聞いてたとか?」

「そう言う訳でもねぇけど。『美月』は有名だから」

「有名って、」

「誰でもやらしてくれるんだろ?」


すっと男は近づいてきて、ソファの背に片手をついた。

その狭間に閉じ込められる形になったあたしを見下ろして意味深に笑って。
もう片方の節くれだった指先が自分の顔に向かうのをあたしは魅入られたようにただ見ていた。

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