最果てのエデン
バニラの甘い匂いのするこの煙草を気に入っていたのは俺ではないから。
んっと手を突き出した動作だけでジッポを要求してきたチャラついた金髪に、それは告げないで、ジーンズのポケットから目当てのものを探り出して渡してやる。
その金髪――佐内脩平は学部こそ違うものの、俺と同じ大学に通っていて、同じく『La lune de l'hiver』でバイトをしていることから親しくなった。
悪友みたいなものだと思っているし、脩平もそうなんだろうと思う。
今日脩平がわざわざ自分を探しに来た理由には見当がついていて、促すように脩平を見る。
脩平はマルボロを1本美味そうに吸いきってから口を開いた。
「――昨日、どうだったよ。お前俺に店番押し付けといて、その後連絡なしってひどくね?」