最果てのエデン
今何時だろうと思ってあたしは傍に転がしていた携帯電話を掴んで、ディスプレイを光らせた。この家に壁時計はない。
――23時か。
まだあの男は戻らない。
『La lune de l'hiver』のバイトに出ているとき、大抵帰宅時間は2時を回るから。
この家に来て今日で4日。
その間あたしが外に出たのはたったの2回だ。
2日目の夜に着替えや必要な化粧品を取りに実家に帰ったのと、昨日の日中コンビニまで出かけた。それだけ。
そのどちらも、いかにも面倒くさそうな顔をしながら男が出してくれたバイクでの移動だったのだけれど。
別に居心地が悪いわけじゃないと思う。
だからこそ、これは駄目だと思うのに、もう少しいいんじゃないか、ここにいてもいいんじゃないかと願っている自分にもあたしは気づいていて。
だから、もう本当に駄目だと思うのに。