最果てのエデン
ここに居ろとは言ったけれど、あたしがこの家に居ることは本当はすごく嫌なんじゃないのかなとあたしは思ってしまう。
でも出て行ったほうがいいのかそれは分からなかった。
かちゃっと玄関の開く音がして、あたしは座っていたソファから立ち上がった。
廊下に繋がるドアを開ければ、上がり框に足をかけたイチくんと眼がかちりと合った。
彼は無表情のままさらりと言葉を放つ。
「なんだ、お前寝てなかったの」
「……あたしいっつもこんなもんだよ。起きてない方が良かったかな」
「――別に。どっちでもいいけど、っつーかお前もう学校行っていいよ」
すっと視線を外して、イチくんがあたしの脇をすり抜けてリビングに入っていく。
コートを定位置に仕舞って、そのまま直ぐに自室へと消えようとする背中を引き止めたくて、たまらずあたしは話しかけた。