Love Water―大人の味―
楽しそうにガラス越しのケーキを見るお客さんに混ざって、あたしもそれを眺める。
今日、このケーキ屋さんに来たのは部長にあげるケーキを買うため。
昨日のお礼をしようと思ったのは、ランチを食べているときだった。
一晩泊めてもらった上に、朝ごはんまでご馳走になってしまったあたし。
ここはやっぱり何かお礼をしなければと思ったのだ。
しかし、あの部長だ。
何をあげたら喜ぶのか全く想像がつかない。
ネクタイじゃあ、重すぎるし、第一ネクタイをあげるほどはお世話になってない……はず。
お酒……は軽すぎるし。
あたしがお酒をあげても、あんまりいい気はしないよね。
昨日のあたしは、酔っぱらっていたのだから。
そうして考えて思いついたのが、あたしの大好きなケーキ。
もう何を考えても部長の好みなんて分からないのだから、どうせなら、あたしがもらって嬉しいものにしようと思った。
ちょうどここのケーキを食べたい、って思ってたところだし。
ガラスの中のたくさんのケーキを眺めながら、部長は何のケーキが好きなのだろうと考える。