夢の時間
「体調不良です 私が水泳始めるまで体育すらしてこなかったのご存知ですか?」
「誰かに聞いたことはないが、その華奢な身体見りゃなんとなくそぉだろうと想像はつく」

「さすがですね・・・正直、無理言って水泳を始めました この1年半・・・体調を騙し騙し・・・」
「たまに風邪って言ってたのは実は違ったのか?」

「はい・・・」
「そぉか・・・気付いてやれなくて悪かったな」

「いえ、気付いてくれなくて良かったです 今日まで楽しめたし・・・ホント感謝してます ありがとうございました」

深々と頭を下げて顧問にお礼を言うと、顧問は恵理子の肩に手を置き起こしてくれた

「感謝してるのは俺の方だ 初めてだ リレーでも個人種目でも教え子が大会新で優勝したのは・・・」

顔を上げて顧問を見ると、顧問はいつもの穏やかな笑顔だった

「で、その体調不良は回復する見込みはないのか?」
「ん~多分水泳はもぉできないです 日常生活はそれなりに・・・」

「部活辞める理由、受験にしといてやるよ 新井は勉強できるみたいだし、勉強に専念したいってことにすれば他の部活からも勧誘されなくて済むだろうし、内申書にも書きやすいだろ」

顧問の気づかいが何よりも嬉しかった

どれくらい話しただろうか

時計を見上げて退部届を顧問に渡して先輩たちに会わずにドクターとの待ち合わせ場所に向かった
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