夢の時間
「そんなことない・・・まだやれる・・・まだやりたい・・・」

堪えていた恵理子の涙が雨のように落ちる

「長くは続けられない 分かってたことだよね?そんな顔しない 恵理子ちゃんは笑顔が一番だよ」

恵理子の涙に心を誘われないよう、平田は天を仰ぎながら言った

「水泳は休憩 今の雑音なら安静にしてれば日常生活に支障はないから」

カルテに記載をしながら恵理子が泣きやむのを待つ

暫くして顔を上げた恵理子の目は真っ赤だった

「水泳 すぐに辞めなきゃダメ?」

小さく懇願するように発せられた恵理子の言葉に平田は考えることなく即答した

「発作が起きてからじゃ遅いからね」

淡々と返した平田だが、最後まで恵理子の目を見ることはできなかった

一方で、落ち着いた恵理子は平田の顔を見ることなく診察室を後にした

恵理子が診察室を出るとき、平田は悪い予感がした

「恵理子ちゃん、もぉ泳いじゃダメだよ」

恵理子は振り返ることも言葉を返すことも無く診察室をでた
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