黒アゲハ Ⅱ -真実- 【完】
「私は夜道を歩いていたの。恐くて走ろうと思ったんだけれど……体調が悪くてふらふらしてた。そこに『大丈夫ですか?』って声をかけてくれたのが」
「……お父さん?」
「そう、結駆だったのよ。
彼は私を家まで送ってくれたの。
でも連絡を交換したわけでもないからお礼、できなくて……。でもね……偶然、偶然またあの仕事帰りの夜道で会ったのよ……」
「お礼をしたかったんだけど……彼の方が用事があってできなかったから……連絡交換だけしたの。それから連絡を取るようになって……お礼にご飯をおごってあげたのがきっかけで、何度か会うようになったわ」
「……………」
「会うたびに……私は彼に惹かれてしまったの……。いけないことだとはわかってた。でも抑えきれなかった、自分の想いに……相手は16歳なのにね」
「……………」
「……まさか自分が不倫なんてするとは思わなかったわ……。
不倫なんてしなければ……あなたをこんな苦しめることなかったわよね……」
「……不倫、気付かれなかったの?」
「あなたが生まれるまで気付かれなかったわ。あの人があなたが自分の娘じゃない、と気付いたのは事故の後だと思う。
最初は疑ってたみたいだけど……あなたがコンクールなどに出て賞をもらえるようになったあたりから……調べたのかわからないけど…えなにか確信を得たみたいだった……」
……だから
あたしに冷たくなっていったの……?