苦い舌と甘い指先
「あたしが言いたいのはっ、なんでこんな朝っぱらからうちの、しかもあたしの部屋に居るのかって事なんだけど」
睨みを効かせて“でていけ”と感情を込めて。
でも当の本人はと言うと、相変わらずの笑顔を貼りつけ
「やだなぁ…決まってるでしょ」
ゆっくりと部屋の中に侵入してくる。
そして後ろ手でドアを閉め、しなやかな動きでベッドの上のあたしの隣に腰を下ろし
「今日、予定は?」
今日一番の笑みで訳の分からん質問を投げかけて来た。
その表情に思わず見惚れながら暫し考える。でも答えなんて考える前から一緒だった。
「……ありません!」
自信たっぷりに答えてやったのに、肥後の野郎はニコニコと笑いながらデコピンしてきたし!!いてぇ!!
「無いわけないでしょ。今日はほら、遊園地。どうせこんな事だろうと思って迎えに来て正解だったよ」
「あ……ああ!そう言えば!」
すっかり頭から抜け落ちてた。マジで。
「えっと…わざわざどうもな…。しかもちゃんと準備する余裕のある時間に。ホント
…どうもっす」
へこへこと頭を下げながら着替える準備をしようと立ち上がったのだが。
「うぉわっ!」
腕を掴まれ、ベッドに戻される。ぼすん、と尻から着地した途端、腹の辺りにまわる長い腕。
「何やってんだよ」
丁度首に肥後の長い髪が当たってくすぐったい。