苦い舌と甘い指先
ワンと鳴け
月曜の午後。
今日もあたしの周りは平和だった。
皆いつもの様に授業など聞いてはおらず
耳にイヤホンをぶっ刺してたり
DSの対戦ゲームに熱中してみたり
教科書を立ててケータイのワンセグ機能で昼ドラに熱中してる奴も
昼飯を食ったばかりだと言うのに、鞄の中からパンをちびちびちぎって食ってるヤツもいる。
そう言うあたしも、机の上に堂々と週刊少年漫画雑誌を広げて、
贔屓の作家のものではないページに、髭を足したり顎をケツ顎に進化させたりして暇をつぶしている。
「おい、ジュノ。それ俺まだ読んでねぇんだッつの。
落書きするなら懸賞ページにしてくれ」
後ろの席から名前を呼ばれ、椅子を下から蹴り上げられる。
「五月蠅いな。あたしも半分払ってんだから良いだろーが。
だから全作品の半分しか落書きしてねぇし」
「半分って…ガッ!!」
言いながら後ろに向かって雑誌を投げてやる。どうやら顔のどこかに当たったらしい。
「いって…。…おい、よくも俺の好きな“ガンタン―願舌―”に楽描いてくれたな」
「だってミツの趣味悪いんだもん」
「お前は分かってない!!あの迫力…あのスピード感…!!
パフェ専門の大食いマンガなんか見た事ねぇだろ!?あの逸脱したセンスがだな。
おい、聞けよ」
五月蠅い五月蠅い。もう、静かにしてくれ。