苦い舌と甘い指先
ミツは、勿体ぶる様に軽い咳払いをしてから口を開く。
「お前は、肥後にとっての“あと一人”なんだ」
「あと一人?」
聞き返したあたしに向かって大きく頷いて見せると、少し躊躇いがちに続きを話してくる。
「……今までアイツは、全校女子を手玉に取って来たんだ。あんまり女に人気のガッコって訳じゃねぇから、人数も少ない。
それに結構あっさりとヤらせてくれる馬鹿女だらけだからさ、攻略も簡単だったって訳だ。
…で、今まででアイツに一度もヤられてないのがお前だけって事だ」
……男子に比べて少ないとはいえ、全校合わせて100人弱は居る筈なのに…。
予想以上の肥後の大活躍ぶりにどん引きした。
顔を引き攣らせるあたしに、ミツは補足というか、修正を加える。
「でも、年上には興味は無いみたいで、手を出すのは同学年か下級生だけらしいぞ」
「……それでも50人は居るじゃん。ある意味すげぇよ。尊敬する」
「……それはどうでも良いんだよ。とにかく、お前が最後の一人だ。
アイツがお前に手を出して来た理由が分かっただろ?お前がアイツのモンになれば
肥後の目標みたいなもんが達成されるんだよ、多分」
…はっきり、全女生徒とヤる事が目標だと断言できない所がミツらしいが…。
でも、あんな事をされたぐらいだ。
あたしを狙う理由も、意味も 一応は理解できた。
「…分かったよ。アイツはそんな男だって事だけな」
「ジュノ、お前もうちょっと危機感感じろよ。…こうやって俺を部屋に上げるのだって、もうちょい躊躇しても良い位だ」
「…それは意味ワカンネ」
「はぁ……」
だって分かんねぇもん。考えても分かんないなら考えるだけ無駄っつーことで。