苦い舌と甘い指先
「とにかくこれで、クラスの連中の反応の理由が分かった。
男共は、アイツを性の神として崇めてるんだろ」
「…みたいだな。性の神かは知らねぇけどさ。
女子たちは、結構欲求不満の時に声かけるらしいぞ。中には本気で肥後の事好きなヤツも居るみたいだけど……。
アイツは、寄ってくる女を拒む事は無いから。
どんなデブだってブスだって性格歪んでたって、アイツは抱いちまうらしい。
だから期待しちまうのかもな」
……自分だって、あの肥後という男の不思議な魅力に気付いていないわけじゃない。
言動も行動も、逐一鼻にかかる男だけどさ
確かに美しいんだ。
顔も勿論だけど、どこか動く度に舞っている様な あの繊細な動き。
絵画の中から飛び出してきましたーって言われても、あたしはきっと不思議に思わないだろう。
でも……。
自分から人に寄っていくくせに、どこか人との間に壁を作っているのも、なんとなくわかるんだ。
マジで猫みたいなヤツ。
分かんねぇけど…なんかさ、気になるんだ。
あの不器用な生き方を見ていると、アイツ、ホントにいつか壊れるんじゃないかって……。
「…ジュノ?」
「ん?」
「どうした、急に黙っちまって……」
「…何でもねぇよ。…お前は能天気で良いよな」
「は!?これでもメッチャ頭使ってるんですが!」
騒がしいミツをシカトして、PSPの電源を入れた。