苦い舌と甘い指先
クラスのムードメーカー的なミツに、皆惹かれて集まって来る。
あたしも人当たりは悪くない方だし、嫌われてるわけでもないみたいだ。
でもクラスの女共とは“話せる”ってだけで、別に仲良くなりたいとかそんなんじゃねぇし…。
第一、肥後なんかのセフレやってる様な女となんて、話が合う筈が無い。
「…かったり」
ミツを囲んでさっさと行ってしまうクラスメイト達。
今だけはミツもあたしの事は頭に入ってないみたいだ。
「……逃げよーかな」
言うが早いか、あたしはこっそりと皆からはぐれ、便所の中でたっぷり時間を置いてから外に出る。
校門から確認してみると 皆の姿はもう、豆粒みたいに小さくなっていた。
ボーリング場はうちと反対方向だし、都合が良い。
ミツが気付いて連絡してくる前にさっさと家に帰ってしまえ。
いつもよりも早いスピードで道を歩き、途中コンビニで飲み物と肉まんを買って、家にたどり着いた。
「ジュノ、早いな」
「あれ?今日、コンビニのバイト休みだっけ?」
いつもなら居ない筈の母ちゃんが、台所で煙草をふかしていた。
「言ってなかったっけ。今日はシフトの関係で夕方からだって。
飯は作ってあるから、とーちゃんが帰ってきたらあっためて出してくれよ」
「良いけど。でも親父も今日遅いって言ってなかったっけ。飲み会だって言ってだだろ」
「そうだっけ。まあ、丁度いいや」
何がだ。