苦い舌と甘い指先
かあちゃんは煙草を灰皿に押しつけながら
「お前に客来てるから。飯も一緒に食って貰え。ピーマンの肉詰め、多めに作ってあるし」
「は?客?」
「ついさっき来てさ、お前の知り合いだっつーから部屋にあげといた。
お前、ミツ以外にも友達居たんだな」
いや、勝手に部屋にあげるなよ。つか、ピーマンかよ。
言いたい事は沢山あったが、『やべ、時間だ』っつって、バタバタし始めた母ちゃんを見てたら文句も引っこんだし、
「夜中出歩いてもいいけど、変質者にだけは気をつけろよ」
…と、親らしいんだからしくないんだか分かんねぇ台詞を吐いて、さっさと出ていってしまったせいもあって、あたしはただ茫然とするしかなかった。
「…客って誰だよ」
ミツ以外の友達って、あたし居たっけ?
中学の時の近藤か?…いや、アイツは県外の高校に行ったはずだし…。
悶々とした疑問と闘いながら部屋に向かう。
やけに静かな部屋の前に着き、一瞬躊躇ってから扉を開けた。
「やあ、おかえ」
……閉めた。
今のは見間違いか?幻覚か?
でも、確かに……!!
どんどん出てくる冷や汗に不快感を感じながら、ゆっくりとまた扉を開ける。