苦い舌と甘い指先




かあちゃんは煙草を灰皿に押しつけながら



「お前に客来てるから。飯も一緒に食って貰え。ピーマンの肉詰め、多めに作ってあるし」



「は?客?」



「ついさっき来てさ、お前の知り合いだっつーから部屋にあげといた。

お前、ミツ以外にも友達居たんだな」



いや、勝手に部屋にあげるなよ。つか、ピーマンかよ。


言いたい事は沢山あったが、『やべ、時間だ』っつって、バタバタし始めた母ちゃんを見てたら文句も引っこんだし、


「夜中出歩いてもいいけど、変質者にだけは気をつけろよ」



…と、親らしいんだからしくないんだか分かんねぇ台詞を吐いて、さっさと出ていってしまったせいもあって、あたしはただ茫然とするしかなかった。



「…客って誰だよ」



ミツ以外の友達って、あたし居たっけ?


中学の時の近藤か?…いや、アイツは県外の高校に行ったはずだし…。


悶々とした疑問と闘いながら部屋に向かう。



やけに静かな部屋の前に着き、一瞬躊躇ってから扉を開けた。



「やあ、おかえ」



……閉めた。



今のは見間違いか?幻覚か?



でも、確かに……!!



どんどん出てくる冷や汗に不快感を感じながら、ゆっくりとまた扉を開ける。





< 37 / 136 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop