苦い舌と甘い指先
「…何で家に上がり込んでいる。っつーかさ、家。何で知ってるんだよ」
すぐにでも逃げられる様に、ドアを開けっ放しにしてその近くに座りこむ。
肉まんが、ほかほかとあたしの膝を温めていた。
「…家は、こないだ、たまたまミツって男の子を見かけてー。後を付けてたみらジュノの家に来たから」
犯罪だソレ。
「……で?何しに来た。うちには面白いものなんてねぇぞ」
「ジュノが面白いから、他には何も要らないでしょ」
「くたばれカス!」
人の事を面白がっているのは分かってたけど、こっちにしたらいい迷惑だ。
ボーリングに行った方がまだマシだったか。
「ね、俺 客人」
「あ?」
唐突すぎて、話が見えない。
だから何だと言ってやると、『やだなぁ』と楽しそうに笑いやがった。
「だから、俺お客様。キミ、この家の人。
お客様が家にやってきたら、出すものがあるでしょー?喉乾いたんですけど」
「貴様は不法侵入者だから問題なし!!」
「えー!?玄関から入って来たのにー!?」
五月蠅い五月蠅い!
勝手に上がり込んで何が客人だ。
意地でも出さないつもりだったが、あまりにも五月蠅いから、買って来たジュースを顔面に向かって投げつけてやる。
肥後は意外にも反射神経が良いらしく、寸での所でジュースをキャッチしやがった。
「あぶねー!!」
「…何で取るんだ」
当たればよかったのに。