苦い舌と甘い指先



ものを食ってる時だけなら、肥後も何もしてこないのかもしんない。


静かな部屋に口の中の音が響くのが嫌で、ふと思った事を聞いてみた。




「……それ、食いづらくねぇのか」



「“それ”?」



きょとんとする肥後に、ちょっとだけ自分の舌を出して、指でツンと触る。



それで理解したヤツは、笑いながら自分でも舌の上にある銀の粒を触ってみせた。



「…もう、慣れたしね。コレ、セクシーじゃない?

唇に開けるのは趣味じゃないし…キスもしにくいでしょ。だから、かな」


「……セクシーだとかはどうでも良いし、キスの話も興味ねぇ」



「えー?楽しいのに…」



お前だけだこの糞野郎。



「そうだ、ジュノも開けなよ、ピアス」


「何で」


「楽しいから」



だからそれはお前だけだろうが!!


何でわざわざ痛い事をしなけりゃなんねぇんだよ。



「あたしは痛いのが嫌いだ。するのも見るのも、吐きそうになる」



「…ふぅん…?」



鼻血とか、外傷が見えなくて 血だけ流れてるんなら大丈夫だけど


その傷口なんか見せられた日には、失神どころじゃ済まない気がする。



それなのに、自分の体に穴開けろって?



死んでもやるもんか…!!


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