苦い舌と甘い指先
「………ぁ」
ヤツの顔が、どんどん近付いてくる。
この距離で、初めて正面から肥後の顔を見た。
それはそれは綺麗な顔立ちで
ある日突然
『俺、本当は女なんだ』
って言われても、『へぇ』で終わらせる事ができそうな位
中性的で、かつ挑発的なものだった。
「…ジュノ…?………赤いよ」
「う…うるせぇ!!」
逃げようと思っていたのに、ドアまで開けていたのに
足に力が入らない。
何だコイツ…!!何か毒でも持ってんじゃねぇのか!!?
そんな妄想も、頬に肥後の吐息がかかるまでの間までで。
「……ジュノ、ほら…こっち見なよ」
やけに艶やかな声色でそう言われて、思わずギュッと目を閉じた。
絶対、言う通りになんかしねぇ…!!
だけど…
「あれ?」
想像していた事は一向に起きない。
そっと目を開けると、そこにはあたしのケータイが差し出されていた。
「はい。赤く光ってたよ?」
「……!!」
勘違い…かよ。