苦い舌と甘い指先






進めないながらも、必死で腕を振り回し、何とかケータイに手が届かないかと もがいてみる。


けど、やっぱり進めないものは進めない。



諦めていったん離れ、肥後の隙を伺う事にした。



肥後はあたしを見ながらニヤニヤとし、ケータイの向こうのミツをからかい始める。



「え?俺?忘れちゃったの?俺だよ、俺」


“え?えっ?”


微かに聞こえてくるミツの声。まだ誰かは分かってねぇみたいだけど


早く取り返さないと誤魔化す事も出来ない。



よりによってコイツと一緒に居る事が知れたらきっと、絶交されるに違いない…!



「返せ!」



じりじりと間合いを詰める。



その間にも馬鹿っぽい会話が繰り広げられていた。





「じゃあねぇ、ヒント。俺はカッコいいです。ヒント終わりっ」



“え!?まさか…キム○ク!?MAJIDE!!”



「ぶふっ!!せいかーい!!」




…お前のどこが 日本国民の永遠のアイドルだこのボケが!




「もう十分からかっただろ」



腹を抱えて笑っている隙に、やっと取り上げる事が出来た。




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