苦い舌と甘い指先
“ジューノッ。おーい、電波ねぇのかー?”
「あ…」
何か言わなきゃと思った瞬間、またあたしの手からケータイが無くなる。
顔を、ケータイが奪われて行った方に向けると
肥後が唇に人差し指を当てて『シィー』と妖美に微笑んでいた。
「……もしもし?あのさ。
もう少しジュノの気持ち、考えてやってよ。
彼女が不器用な事、ずっと一緒に居たキミなら分かる筈じゃないの」
“え?”
「キミがいつまでもそんなんだから、俺みたいなぽっと出の男に手を出されちゃうんだよ」
“…おま…キム…?……!………肥後か!”
「当ったりィ!…自分の事しか見えてない男には負ける気がしないね。
じゃ、そういう事で」
“おい!待…”
ミツが最後まで何かを言う前に、肥後は通話を終了させた。
「はい」
にっこりと満足そうにしながら、ケータイを手渡してくる。
「……お前は余計な事を…。それに、何だ。負けるとか、いつまでもそんなんだとか…」
「うーん。ジュノに説明するのはまだ早い…かな?」