苦い舌と甘い指先
…んだよそれ、ワケ分かんね。
不貞腐れつつ、こいつが電話を取ってくれなきゃ、今頃あたしの暗い感情がミツにだだ漏れだったかもしれないと考えると…ちょっと、いや…かなり助かったと思う。
「あの…さ」
「ん?」
「……どうもな」
人に礼を言うのなんて、しかも苦手なヤツに言うのなんて、屈辱以外の何物でもない。
でも、助かったのは事実だし
肥後に助ける気が無かったとしても、礼を言うのは当たり前の事だと思ったから。
流石に顔は凝視できなくて、そっぽを向いた状態で だったけど。
たっぷりと間を置いて、肥後はフッと笑みを漏らした。
「……ホント、可愛いよ。キミは」
「あ゛!?」
フッと笑う肥後を睨みつけようと顔を上げる。
でも。
「…?」
目の前にぶら下がる、小さな包み紙。それが視界の殆どを埋めていて、肥後の顔はぼやけて微かに映る程度だった。
「何だよこれは」
顔を少し右に避けると、そこでやっと肥後の顔を見る事が出来た。
「…ご褒美。あげるよ」
「…何の褒美だ」
「キミが泣かない様に頑張った御褒美」