苦い舌と甘い指先
「……ちゃんと食っただろ…。離れろよ」
飴はもう口の中だと言うのに、コイツは中々あたしから離れない。
それどころか、顎を掴んだままの手が、ゆるゆると唇を撫で始めた。
触れるか触れないか、そのもどかしさに頭がおかしくなりそうだった。
「何やってんだよ、離れろ変態!!」
「…いや、ね。ジュノは美人だなーと思って。
唇も、程良くふっくらしててさー。…なんかキスしたくなっちゃうよね」
「…したら死なない程度にコロス」
「こわーいっ」
肥後はそう言いながらぱっと身体を離す。
それが意外だった。
てっきり本当にされるのかと身構えていたから。
「……安心しなよ。キミが“して”って言うまで何もしないから」
先程まであたしの唇を撫でていた手の親指を、自分の唇にあてながら
挑発的にクスリと笑って見せる肥後。
マジで卑猥な、男。
「……………誰が言うもんか」
「そう…?……もう既に物足りなさそうな表情(カオ)してると思うけどね…」
「それはお前だろう!!あたしを挑発しても無駄だ無駄!」
「…ふぅん?」
何が“ふぅん?”だ。あたしがこんなヤツと、どうにかなりたいなんて思う筈がない。
それなのに、何でこいつは余裕たっぷりに笑ってるんだ…!!