苦い舌と甘い指先
なっちゃん
「にーたんね?こっちのパンが食べたいのぉ」
「にーたん…こんな小さなパン一個で済ませてしまうなんて…。前世は小人かい?」
「やだぁもうっ。りょーたんがおっきすぎるんだよぅ」
「可愛いなぁ、にーたん」
「カッコいいなぁ、りょーた…」
「うっゼ!!退けよ、あたしの邪魔だ!」
朝、コンビニなう。
只でさえ眠いしイラついてんのに、この糞カップルがいつまでもパンの棚の前でいちゃいちゃいちゃいちゃ………!!!
「退けっつってんだよ。聞こえないならその耳いらねぇだろ?あたしに寄越せよ。
捨てといてやる」
「ひぃっ」
「ちょ…りょーたん、行こうッ!!
あの人にーたん達の愛に嫉妬してるんだよ!」
「…何でもいいから、退け」
ハエを追いやる様に、手でしっしっ とやると、『覚えとけよっ』とか何とか言いながらコンビニから出て行った。
何だか、朝から甘ったるいもんを食った見てェに、胃がどしんと重くなった。
「嫉妬…か」
別に愛だの恋だのは興味が無いが、アレがあいつらの日常なんだと思ったら羨ましくなった。
あたしも、いつもの様に、何にも考えず
ただ起きてガッコに行って飯食って寝る
その生活に戻りたかった。