苦い舌と甘い指先
あの日…。
肥後が家に来た日。
あの後ミツは、何も言わず、不機嫌さだけを露わにしながら帰って行った。
今言いたくない事でも、次の日には何かしらのアクションを起こすのだろうと思っていたのだが
次の日も、その次の日も……。
週明けの月曜になった今も、あたしはミツから何も聞いちゃいなかった。
勿論その間、殆ど会話を交わす事は無かったし 話しかけるなと言うオーラが体中からにじみ出ている気がして
あたしからアイツに何かを言う事は無かった。
肥後も肥後で、あれからあたしにちょっかいを出さなくなった。
教室には来ないし、どこかですれ違っても手を振って笑いかけるだけ。
それはそれで楽だったが、そうなると必然的にあたしは一人になるわけで。
教室移動の時も、飯を食う時も、帰る時も
誰かに話しかけられるのも面倒だったけど
誰かが側に居ないってのも、結構嫌な気分になるんだ。
……つくづく自分勝手だな、あたし。