苦い舌と甘い指先
「ありがとうございましたー」
パンとスナック菓子とジュースを買って、男性店員に にこやかに送りだされた。
あーーあ。
なんかいい事ねぇかなーーー……。
そう思いながら大きく伸びをした瞬間
「ぶっ」
「あ」
手に持っていたコンビニの袋が、後ろを通りかかった人の顔面に当たったらしい。
……漫画かよ、と思いつつ、後ろを振り返る。
「すみませ……げっ」
鼻を抑えながらあたしを見下ろしていたのは
「……やだなぁ。人の顔見てあからさまに嫌な顔するなんて」
「……肥後。お前…生きてたのか」
「え?何?」
たった今脳内に過っていた男だった。
「いや……。随分見かけなかったような気がしてたし…。
教室にも来ねぇし……死んでんのかと」
何故か顔を見る事が出来ず、視線をしらねぇ家の塀に向けたままモゴモゴと口の中で呟いた。