苦い舌と甘い指先





ミツがこんなに意気地のないヤツだとは思わなかった。


別に何を隠してようが、どんな嘘吐いてようが、


ヘタレのコイツだからきっと大した事無い筈なんだ。



小学校の時、一回こういう事があった。



あたしと遊ぶ約束をしてたのにすっぽかされて、仕方なく別の友達と遊んだ時。



もう次の日にはすっかりその事を忘れていたのに、ミツは律儀に『ゴメン』と言って来た。


けど、その理由は頑なに教えてくれなくて。



あたしは今が楽しければ、わざわざ難しい事を考える必要も無いと思っていたから普通に接し始めたんだけど、


ミツはそれがまるで辛い事の様に、眉をハの字にしながらニコリとも笑わなかった。




それから一週間ほど経った時 家の前でミツの母ちゃんとばったり会って、



『こないだはジュノちゃんとお約束してたんだって?


コレ、遊園地に行った時のお土産。遅くなってごめんね?』



って言われるまで、ミツがあたしに隠していた事なんか分からなかった。




ミツはあたしとの約束を破って、一人遊園地に行った。



たったそれだけの事が、アイツを笑わなくさせてたんだ。




口を閉ざしていたのは多分、約束を破ったくせに楽しんでしまった罪悪感からだろう。




兎に角、ミツはそんな感じで、凄い事を隠してる素振りがあっても



いざ蓋を開けたら、それはもう、とんでもなく下らない事だったりするから。





今回もそうなんだ、絶対に。




< 67 / 136 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop