苦い舌と甘い指先
秋も終わりにさしかかったせいで、身体を突きぬける様な寒さがマジで辛い。
何だってこんな所に…。
「…ごめんね、すぐに済むから」
そう言って笑う夏輝も、生足を擦り合わせていた。
「……で、何?」
「あのね…トシとミツの事なんだけど」
トシ…?そう言われても、思い浮かぶ人物は居ない。
そんなあたしの様子に気付き、『ごめんごめん』と慌てて言葉を付け足す彼女。
「トシは肥後の事だよ。駿樹だから、トシ」
「ああ、そういう事。何かと思った。…で?」
「うん…。ジュノちゃんって、どっちかと付き合ってるの?」
「……は?」
急に何を言い出すかと思えば。
「…そんなわけねぇじゃん。ミツは只の幼馴染だし、肥後に至ってはカスだとしか思ってねぇよ」
「そう…なの?」
「ん」
…だけど、ちょっとだけ胸が痛んだ。それが何でなのか分かんねぇし、どちらに対してなのかも分かんねぇけど
夏輝のホッとしたような顔を凝視できない位には辛かった。
視線を宙に浮かせたまま、ブレザーの裾を握りしめて堪える。
……んだよ、コレ。
あたしじゃない、みたいだ。