苦い舌と甘い指先

キンジョのおねいさん








昔、まだ小学生のガキの頃。


近所にすげぇカワイイおねいさんがいた。



「えーちゃん」


確か、そう呼んでいたと思う。


高校生だったえーちゃんは、面倒見が良いのか子どもが好きなのかはわかんねぇけど


あたしが懐いて寄っていくと、いつも笑顔で遊んでくれたもんだった。



「なぁに、ジュノちゃん。また漫画、読みたいの?」


「うん。えーちゃんの持ってる漫画、目がきらきらしてて羨ましいから」


「そっかぁ…。でも、本当にキラキラしてるのはお話の方なのよ?」



えーちゃんの持ってた漫画は、どれもこれも目が輝いていて、


妙にキラキラした男がふわふわした女と恋人になるオハナシ


そればっかりだった。



それに、その頃のあたしはまだ愛も恋も分からないガキだったから



「お話しは良く分かんない。ただ、絵が見られればそれで楽しい」



そう言って、えーちゃんを苦笑いさせていた。



ピアノも習っていたえーちゃん。


あたしも知ってるアニメの曲を、いとも簡単に弾いてしまう彼女の指が本気で羨ましかった。


すげぇ優しいし、手作りだと言うお菓子だってめちゃくちゃ旨かったし



何より、あたしを本当の妹の様だと言ってくれたから。



あたしはえーちゃんの事が、大好きで大好きで堪らなかったんだ。




< 74 / 136 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop