苦い舌と甘い指先
キンジョのおねいさん
昔、まだ小学生のガキの頃。
近所にすげぇカワイイおねいさんがいた。
「えーちゃん」
確か、そう呼んでいたと思う。
高校生だったえーちゃんは、面倒見が良いのか子どもが好きなのかはわかんねぇけど
あたしが懐いて寄っていくと、いつも笑顔で遊んでくれたもんだった。
「なぁに、ジュノちゃん。また漫画、読みたいの?」
「うん。えーちゃんの持ってる漫画、目がきらきらしてて羨ましいから」
「そっかぁ…。でも、本当にキラキラしてるのはお話の方なのよ?」
えーちゃんの持ってた漫画は、どれもこれも目が輝いていて、
妙にキラキラした男がふわふわした女と恋人になるオハナシ
そればっかりだった。
それに、その頃のあたしはまだ愛も恋も分からないガキだったから
「お話しは良く分かんない。ただ、絵が見られればそれで楽しい」
そう言って、えーちゃんを苦笑いさせていた。
ピアノも習っていたえーちゃん。
あたしも知ってるアニメの曲を、いとも簡単に弾いてしまう彼女の指が本気で羨ましかった。
すげぇ優しいし、手作りだと言うお菓子だってめちゃくちゃ旨かったし
何より、あたしを本当の妹の様だと言ってくれたから。
あたしはえーちゃんの事が、大好きで大好きで堪らなかったんだ。