苦い舌と甘い指先
だから
『何言ってんの?お前。別にお前が誰と付き合おうがヤろうが、あたしには全然全く関係無いんですけど!!』
そう言って逃げた。
あのまま あの場に立っている事は、あたしには到底無理だと思ったんだ。
あの冷たい視線は
もう二度と見たくない。
二の腕が粟立つ程 恐ろしく感じたから。
「ジュノ」
「…何」
制服に身を包んだ人で溢れ返っている通学路の途中、突然ミツが前方を指差した。
「あれ、夏樹と…肥後か?」
たった今頭の中で考えていた奴らの名前を出されて反射的に身体が跳ねる。
見たくないと思いつつも、その目線はしっかりとミツの人差し指のさす方向に向いてしまっていて
「……だ、な」
見てしまった後ではもう遅いが、すぐに視線を外して掠れた声で頷いた。
腕組んで歩いてた。
朝っぱらから、何だよ。
モヤモヤしてイライラして堪らなくなる。
大きくため息を吐いてiPodのイヤフォンを耳にねじ込み、
鼓膜が破れそうになる位、音を大きくする。
もう、良いよ。どーでもさ……。
だけど、ミツはそんなあたしを見て、面白くなさそうな顔をしていた。