苦い舌と甘い指先
そう思ってミツを見やると、何故か口を開けて放心していた。
「…おい」
その開いた口に砂でも入れてやろうか。
「ジュノちゃん、ホント鈍感て言うか…男殺し?」
「…何だソレは」
夏輝はため息を吐いて、やれやれ、と首を横に振る。
「もうさ、言っちゃいなよ、ミツ。ジュノちゃんがこんなんじゃ、いつまでたっても気持ちなんか伝わんないよー」
「ちょ…ばっ…言えるわけねぇだろうが!!どうすんだよ、これ以上ギクシャクしたら!!」
「大丈夫だってば!てか言え!言わないと呪い殺す!」
「は!!?呪…殺……!?」
……何だこいつら。マジアホみてぇ。
何か分かんないけどじゃんけんまでし始める始末に呆れて、一人席へと着いた。
二人のあのテンションの高さ、疲れる…。
まぁでも。
あいつらに関わってる間はあんまり肥後の事、思い出さなかったな…。
それはすげぇ楽だった。
もう、いっそこのまま忘れてしまいたい。…いや、忘れちまおう。
考えない様にして、そんで会いさえしなけりゃ良いんだ。
……この時は、それが無駄な事だなんて微塵も思っちゃいなかった。いや、思いたく無かったんだ。
何かしないと、あたしの頭が爆発しちまうんじゃないかって位、中身は肥後の事でいっぱいだったから。