苦い舌と甘い指先




羞恥で顔に血が昇って行くのを感じながら、声のした方を見やると


「…やあ。自分勝手なジュノさん?」


「……お前…」


肥後が嫌味な笑いであたしを見下ろしていた。


階段の下から二段目に立っているせいで、いつもよりも見下されている感じがする。


あたしの熱くなった顔が、一気に冷気を浴びまくった様な冷たさに変わっていくのが分かった。



「……どうしたの?反論は?

…まあ、そうだよね。出来るわけがないか。自分がどれだけ身勝手な事をしたのか、分からないわけじゃないよね?」


「……は?身勝手って何だよ」



「…本気で言ってるの?」


口元にあった笑みをも消して、あたしを道端のゴミでも見る様な目つきで睨みつけてくる。


いつもニコニコしてるヤツから笑顔を取ったらこうなるから、怖い。



「本気って…。大体な。お前こそあたしに散々身勝手押し付けて来たくせに、イキナリ何だよ!!」


「俺と夏輝をくっつけたのはアンタだ」


肥後はあたしの話も無視して、じりじりと詰め寄って来る。


「アンタのせいで大変な事になってるの、分からない?」


「は?意味ワカンネ。

つか、何が大変なのかしらねぇけどさ、別にあたしが言ったからって付き合ったりしなきゃ良かったじゃねぇか。

それにな、あんなに可愛い子捉まえて、何が『大変な事』だ。


お前、世の中の恋人いない男共に刺殺されんぞ」


「五月蠅い!!!」



ビクッ と身体が跳ねた。


肥後のこんな叫び声、聞いた事無い。




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