苦い舌と甘い指先
チュッと音を立てて口づけしたのは、露わになった太ももだった。
「~~~~!!」
口と一緒に鼻も抑えて、必死で声を殺す。
何…大人しくやられてんだろ、あたし……。
こんな事、嫌でしかない筈なのに。何で…何で。
「…ジュノ…?」
名前を呼ばれて瞬きをすると、いつの間にか溜め込んでいたらしい涙がボロリと頬を伝った。
「……泣く程嫌だった?」
「…そうだよ。こんな事されて、何で喜ばなくちゃいけないんだ」
--違う。嫌なのは、何も出来ない自分の方だ。
言葉で伝えなくちゃ分からないのに、こうして自分に触れてくる肥後に、心のどこかで満足している事が嫌なんだ。
コイツの目があたしを捉えていれば、それでいいと思ってしまっている。
だけど好きだとさえ言えない自分が、こんな感情を上手く伝えることなどできる筈も無く
開けたままの口からは言葉にならない声が掠れて消えて行った。
それを見てフッと笑みを作った肥後。
「そう…だよね。キミは、そう言うと思ってた」
思ってた、と言う割には酷く傷ついた顔で笑っている。
何でそんな顔をする?何であたしに触れる?
「お前は…」
“あたしの事が本当に好きなのか?”
その言葉もまた、声に出す事は出来なかったのだけど。